創作短編(17) 大久保利通暗殺と大隈重信 -3/8 [稲門機械屋倶楽部]
2011-04 MWE36 梅邑貫
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「大久保を斬るに、罪状は五つも要らん。どれか一つで十分よ。俺は斬る」と、浅井壽篤は興奮気味である。
「浅井殿、まあ落ち着いてくれんか。斬るのは大久保のみにあらず。他にもおるのだ」
「誰だ」
「斬奸状に記してある。よう読んでくれんか」.
島田一郎が命を狙う者の名は斬奸状に墨書されており、それは次の七人でした。.
木戸孝允
大久保利通
岩倉具視
大隈重信
伊藤博文
黒田清隆
川路利良.
この七名の名を読んだ者は大きく頷いたが、その内の一人がやおら声を上げた。「桂小五郎、いや、木戸孝允は昨年の今頃に逝っておる。順番で申せば次は内務卿の大久保利通となるのう」
「その七名の名は斬る順番ではあるまい。だが、黒田清隆と川路利良はそれほどの大罪は犯しておらん」と、他の者が島田一郎に問うでもなく問うた。
「先月、三月のことだが、黒田清隆の妻が病死したが、知りおろうな。その後、黒田が酒に酔うて妻を殺したとの噂が流れた。これも知りおろうな」
先ほどの者が頷くのを見て、島田一郎は続けた。
「黒田と川路は共に薩摩の出で親しく、しかも川路は大警視、東京の治安を護る警察の元締めよ。黒田の妻の墓を掘り返して、病死を確めたと言い、黒田を庇うたのだ」
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