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ぼくあずさ氏の航空三題に寄せて -5/9 [稲門機械屋倶楽部]

                                        2010-11-10 WME36 村尾鐵男

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MRJの保守委託をボーイングと折衝

率直に申し上げて、「保守委託」を英文で何と表現しているかが判らないと正確なコメントができませんが、おそらく “Product Support” であろうと察します。

航空機製造産業と航空輸送業界には共通する用語として “AOG” なる言葉があります。この言葉は “Aircraft On Ground” の略語ですが、航空会社の整備の現場で、故障したり不具合になった部品や装備品を交換しようとして、その代替予備品が補給倉庫に無い事態がたまに生じます。

このとき、航空会社は「この部品がないと航空機を地上に停留したままになる」との意味で、”AOG” を付した緊急の部品発注を行います。昔はテレックスの冒頭に “AOG” と記し、今なら電子メールの初めに “AOG” と記入します。

部品がないために航空機が地上に停留するのは航空機製造会社にとっても好ましいことではありませんから、緊急の “AOG”発注を受けた航空機製造会社はその部品や装備品を24時間以内にその航空会社へ届けるのですが、これは努力目標ではなく、航空機購入に際して結ぶ “Product Support” 契約で明文化されております。

部品類の “AOG” 発注は、”Product Support” の数ある内容のほんの一例に過ぎませんが、操縦士と整備員の訓練、航空機と装備品の改良に関する情報提供、同じ機種を運航する他の航空会社での故障とか不具合の情報、部品の適正在庫量、操縦や整備のマニュアルをはじめとする技術関係図書の最新版の配布、その他諸々の支援業務を航空機製造会社は運航会社へ提供しなくてはならず、又、技術駐在員を航空会社に配することも必要になります。

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この “Product Support” が日本の航空機製造会社には欠けているか、その重要性を知ってはいても十分な態勢が整っていない場合が多く、それが日本製の航空機を世界に販売する際の大きな足枷となっています。

かつて、YS-11機の外国への販売では、この “Product Support” が不十分で販売に苦労をしたのですが、そのときの若き担当者達も既に引退し、貴重なノウハウは受け継がれずに途絶えてしまいました。

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ですから、”Product Support” では定評のあるボーイングに三菱MRJの “Product Support” を委託しようとの意図は十分に理解でき、少なくともボーイングはMRJと競合する機種を製造していないので、三菱航空機とボーイングの利害が対立することはないと察せられます。

しかし、ボーイングに限りませんが、”Product Support” は意外に高いコストを要することを三菱航空機は十分に承知しているでしょうか。


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めぇてる

nice!ご訪問ありがとうございます
by めぇてる (2010-11-20 20:24) 

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